2016年3月19日土曜日

【HEAVY】メタルレジスタンスレビュー


オーストラリアのメタル・ヘヴィーロック雑誌Heavy Magazineによるレビューです。

Nathan Eden(NAT-METAL)著

多くのメタルファンはBABYMETALはトランプの選挙キャンペーンによって押し寄せるコントロール不能となった善意に等しいと猛烈に言い張る。自己の信じる正義をもって、誰も彼らに実際に耳を傾けず、より力を持たないよう警戒しているのだ。メタルファンの急進派を非難する自尊心の保ち方は、ある意味、誠実な政治的パルチザンかのようだ。もし君がブラッケンド—テック—デス—クラスト—グランド—トゥール—シェッドメタルの大ファンであるなら、BABYMETALに良い事を述べる事はまずないだろう。



ああ、わかるよ; BABYMETALは「真のメタル」ではない。だがきっとドナルド・トランプも我が家のテレビに登場しているだけのリアルな人間ではない。ルネ・デカルトの言葉に「我テレビに出る、故に我あり」というものもある。だから無知な小槌は端へと押し込め、BABYMETLの新作メタルレジスタンスに満足のいく曲があるのか見てみようではないか。

アルバムは始まりからふさわしく空気を盛り上げる曲調がヴァイキング風の興奮を呼び起こし、リスナーのガードを下げさせ、絶え間なき速いドラムへと転換し、女の子達の後ろにいるバンドの力を5分の間に証明する。アルバムの4分の3をどう楽しめるのかを理解の速いリスナーに知らしめる一切れのご馳走だ。キャッチーでポップなトリオの 声を楽しむ事を認められないのなら、その裏に流れる肉汁たっぷりのグルーヴに齧り付けばいい。

そうしている間に、中元すず香、またの名を「SU-METAL」はAwadama Feverの4分間の中、チューイングガムで 飛んでいく事について幾度か伝えている。彼女は物理学の権威ではなさそうだが、そのサビは信じられない程にキャッチーで脳にこびりつく。あたかも…えー、靴についたチューイングガム?

もちろんそのJ-POPの正気の沙汰ではないキャッチーさがアルバムの大部分に浸透している。セカンドシングルKARATEは格闘技をメタファーとし、心臓が取られても抵抗する事を歌っている(比喩的に — これはCannibal Corpseじゃないんだからな) Meta Taro(Metal Boy)のヒロイックな物語は日本の伝統的な物語である桃太郎のパロディーであろう。もし私の日本語がもっと上手であったなら確かな事が言えたのだが。

言えるのは、前述されたそれぞれが、立派な音楽的成果を遂げているという事だ。
とりとめのないフィラーの数曲もあるものの、きちんと目にする心算ができていれば、メタルレジスタンスには気に入るものが多いにある。スラッシュやカークハメットといった権威が推奨するそのバンド自体、日の出ずる国の最上の一つだ。SU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALによる甘いボーカルパートは、大半の自尊心あるメタルヘッズが話題に持ち出さない事を確実とするが、だが彼らも寝静まる時にヘッドフォンを通じて聴き、黒ずんだ心をなだめる虹とユニコーンの世界へと誘われるのだろう。おそらく。

ああ。BABYMETALはJ-POPの光沢を我らが愛するメタルと混ぜ合わせた。ああ。彼女たちはLADY GAGAのオープニングアクトをした。ああ。彼女たちはどこぞのレコード会社の重役達が「カワイイメタル」としてマーケティングしたアイドルバンドだ。それでもアヴリル・ラヴィーンよりはずっと良いだろ?

我々が当初メタルを愛した事と比べれば、メタルレジスタンスは奇妙なものだろう。個人的に、Deicide*1が子供だった自分を正統に恐れさせた最初のバンドで、その時に自分はメタルを愛していると気付かされた。
SU-METALがベントンのようにその頭へと逆十字の焼き印をつける*2姿は想像はできないが、その事で楽曲に説得力を欠くわけではない。

君がどれだけこのレコードが好きか友達に言わないだろうって事はわかっている。俺にもその勇気はなかっただろう。だが彼女たちはベッドタイムのユニコーンを提供してくれているのだ。ドナルド・J・トランプが未来のTVドキュメンタリーを見せている一方 — Idiocracy*3を。

訳者注釈:

*1 Deicide

悪魔崇拝、アンチクライストをテーマとしたアメリカのデスメタルバンド。ブラックメタルシーン形成前から活動をしている。

*2 ベントンのようにその頭へと逆十字の焼き印をつける

Deicideのメンバー、グレン・ベントンは額に逆十字の刻印をしている。

*3 Idiocracy

2006年に公開されたアメリカのブラックコメディ映画。邦題「26世紀青年」。
知識人・富裕層が自分たちの生活スタイルを重視したり、地球規模での人口増加を危惧し、子供をつくることを避ける傾向にある中、教育を受けていない貧困層が快楽のままに子作りをし続けた結果、IQの低い人間が支配するアメリカが出来上がっていたという設定の物語。予見的であるとして強い人気があった映画だが、トランプ台頭により再度注目を集めている。

ソース: HEAVY

2 件のコメント:

  1. 精力的な翻訳活動ありがとうございます!
    一転して面白いレビューが続きますね。
    『黒ずんだ心をなだめる虹とユニコーンの世界』笑

    翻訳はもとより注釈も楽しませていただいています。

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  2. レビュー翻訳有難うございます!

    「靴にこびりついたチューイングガム」
    汚い言葉を使っているようでいて、すぅの声がかなり印象に残っていることは認めている。
    むしろ褒め言葉と受け取ってもいい。

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