2016年3月29日火曜日

【MUSIC FEEDS】メタルレジスタンスレビュー

オーストラリアの総合音楽情報サイト「MUSIC FEEDS」によるレビュー。

BABYMETAL - メタルレジスタンス

Brenton Harris著

ネタバレ注意: もし君が「真のメタル」の絶対的擁護者で、BABYMETALが現代の音楽産業の過ちそのものである事を述べる長い論説を期待してクリックしたならば、その苦痛を和らげるものはこのレビューにはあまり見当たらないだろう。自分で書き、賛辞を得て、Black Sabbathのセルフタイトルアルバム*1を聴いていればいい。そうすれば私のレビューとは違い、君をガッカリさせる事も決してないのだから。それ以外の全員は私と共にBABYMETALの「メタルレジスタンス」によるすばらしい新世界へ向かおうじゃないか。

猛烈なタイトルトラックRoad to ResistanceによってBABYMETALがメタル側面のボリュームを上げたか、またはNi-ban(訳注: 二番; 二枚目のアルバムの意)でJū ichi(訳注: 11) にした*2事が直ちに明らかになる。
ツインギターのハーモニーとスピードメタルのリズムがSU-METALの独特なボーカルで支えられ、Kami Bandの中でDragonForceのHerman LiとSam Totmanがフィーチャーされるこの曲は、ワールドクラスのパワーメタルであり、BABYMETALのコンセプトは滑稽にも見えるが、メタルレジスタンスはジョークでも何でもないという事を最初に示すものだ。

リードシングルであり、今年君が聴くメタル内外の曲の中で最もキャッチーな曲と名乗りをあげるKARATEが続く。ファーストアルバムの曲と同様に繰り返し聴かせる中毒性が満遍なく含まれている。雷鳴のようなリードリフが鳴らされるその瞬間から既にポップメタルの完璧な習作であり、ドラム、ギター、ベース、ボーカルが完璧なユニゾンで共になって究極のヘヴィーメタル聴覚寄生虫を創り上げる。

ボーカル面においてKARATEはメタルの強力さを保ちつつ、現代ポップスの「メロディックな数学」をAメロ、Bメロでの手法としている。そしてEuro Vision優勝者に値するサビを迎える。多くの疑いを抱いていた者をファンへと転向させるBABYMETALの曲だが、注目に値する曲はこれだけではなく、奇妙な行進曲のようなMeta Taro(ライオンキングのスカーによる「準備をしておけ」*3がJ-POPになったものを想像してみてくれ)が例外となり得るが、メタルレジスタンスの全てはうまくいっていると見受けられ、BABYMETALが12曲の間に含んだ音の領域は正当に感銘を与えるものだ。

BABYMETALの「神秘的発想の源」Kitsune (The Fox God)はこれらの曲を作り上げた時に実験的心理状態*4にあった事は間違いなく、そしてKami Bandもその演奏で神の期待を裏切らない。喜びに満ちたYAVAでスラッシュメタルから、パンク、そして純粋なJ-POPを クロスオーバーさせ、ドゥーム的な90年代のドラムンベースの影響を受けたメタルコアである「GJ!」、Sis-Angerの全開のスピードメタル攻撃(本当に素晴らしいギターソロを含んでいる)、そして5分間のピアノがリードするバラードNo Rain, No Rainbowまで。

けれども女の子達の独特なボーカルの貢献がなければBABYMETALはBABYMETALでなくなる。SU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALの3名全員が、ここでの彼女達のパフォーマンスに評価を受けてしかるべきであり、SU-METALはメタルの世界の中で、最も多芸で才能に恵まれたボーカリストの一人であるという正当な主張を受けるべきである。

英語で歌われるバラードThe Oneでは親密さを呼び起こし、From Dusk Till Dawnは地獄の炎と硫黄(私はそう思う)を叫び、エレクトロが注入された曲芸飛行士Awadama Feverでは印象的なボーカル運動を聴かせる。SU-METALは全ての音において完璧で、日本語を話せようとそうでなかろうと、全ての曲にのめり込める事を彼女がリスナーに対して確実としている。彼女がまだ18歳だと思うと恐ろしい。彼女は既に正真正銘のスターだ。

さくら学院を起源としたプロジェクトである事から想像できるように、メタルレジスタンスのプロダクションは完璧である。家庭で流れるポップラジオにおいても、車中での爆音でも、誉れ高き武道館で炸裂するにおいてもだ。

BABYMETALは、その唯一の存在意義とは、偉大なるメタルの世界へと新しい世代の音楽ファンを誘う事だと主張している。私はその再生ボタンを懐疑的な気持ちのまま押した事を認める。しかし繰り返し聴く内、私はメタルレジスタンスの一員となる用意ができていたのだ。


訳者注釈:
*1 Black Sabbathのセルフタイトルアルバム

邦題「黒い安息日」。
メタルの起源については諸説あるが、このアルバムを起源とする説も有力視されている。

*2 11にした

架空のメタルバンドSpinal Tapを基にしたモキュメンタリー映画「スパイナル・タップ」に登場するアンプは通常最大が10のところ、11まで刻まれている。
ここからきた喩えであり、基準以上に良くする事や、よりロックに(メタルに)する事を喩える表現として音楽評論の中でよく使われる。

*3 「準備をしておけ」

ライオンキング劇中歌。

*4 実験的心理状態
ドラッグでも使っていたかのように発想に富んでいる、という事を更に比喩的に表現している

ソース: MUSIC FEEDS

13 件のコメント:

  1. MUSIC FEEDS、メタルレジスタンスへようこそ!SUは16歳でないけれど(笑)しかし何?このBABYMETALが絶賛されることが何か自分の事のように嬉しい気持ちになるって。こんな体験初めて。SU-METALは正真正銘のスターだなんて。こっちが照れちゃう(笑)「METALRESISTANCE」が爆発的に世界で売れたら嬉しい。

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  2. そうなんですよ。コンセプトは面白いし神バンドは素晴らしい。
    でもやっぱり3人が最高に魅力的だからこそ成立してるグループなんです。
    スーさんなんか日本で宝塚の主役くらいの扱い受けていい(^◇^)

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  3. BABYMETALの記事になにげに付随してさくら学院の名前がじわじわと世界に拡散していっているこの現実w
    さくら学院の高クウォリティーを当然のように前提にした論評がとても嬉しいです。

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  4. オリジナルの英文は読者からの指摘を受けて
    18歳に修正してますよ。

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    1. 訳文も18歳に変更しました。
      ご報告ありがとうございました。

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  5. 最近のまとめサイトの中ではここが一番内容が濃いね

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  6. 時々海外レビューで神バンドのことが出てくるが、実際レコーディングに参加してるのはLEDAだけでしょ?ほとんど打ち込みなんだろうし、サンプリングで参加してるかもしれないけど。

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  7. 翻訳ありがとうございます!
    ようやく音源が到着して完全に正気に戻りましたが、こういう時に限って仕事が忙しくまだ二周りしかしていません。今は素直にBABYMETALと関わったスタッフ全てに感謝と賛辞を送りたい…仕事が終わったら翻訳していただいた全ての新譜レビューをもう一度読み返そうと思っています。

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  8. 今回の2NDで欧米の音楽業界、評論家揃って高評価をつけてますね。
    このバンドが次の階段を登った事を証明しつつあるかもしない。
    今回にツアーを欧米の識者が体感してどう反応するか興味があります。

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  9. いつもありがとうございます!
    ところでTHE ONEのPVのラストにテキストメッセージが出ますよね。
    あれが訳せません!何を言ってるのでしょう??
    よかったら教えてください。

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  10. 是非Dom Lawson氏のアルバムレビューをお願いします

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  11. 更新が途絶えてるということは、タイミング的にウェンブリー参戦ですか?

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  12. 「BMが絶賛されていると、自分の事の様に嬉しくなる」
    「SUは正真正銘のスターだなんて、こっちが照れちゃう」
    全く、同感ですね。何なんでしょうね?この感覚。
    確かに、SU の身長があと5cm高かったら、宝塚の男役スターも有り得ただろう。
    SUは太陽でYUI MOAは月、神バンドは金星、火星、木星、土星かな。
    ...なんて言うと、色々と批判を浴びそうですが...
    太陽ありきで、月も惑星も輝き、その存在を認められ、評価される。
    自分の惚れているものが、あるいは自分の子供が、孫が、正当に評価されて、
    だから、「自分の事の様に嬉しい」「照れてしまう」と言うことなんでしょうね。

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